あの時私は大学生だった。
故郷を離れて一人暮らし。
ようやく慣れてきて一年たたないところだった。
その頃私は新入生になる子達のサポーターとして春休みも学校で活動していた。
次の日は後期試験日で、たくさんの受験生達が前日入りしている日だった。
あの時、友人と家にいた私は七階の部屋が衝撃と共に揺れ動いた瞬間、冷蔵庫を必死に押さえていた。
窓の外の三叉路を見れば信号機が停電で止まって、車が一気に立ち往生し、近くの交番から警察官の方が飛び出してきた。
14時46分。
電気がつかない。
水も出ない。
愕然とした。初めての大震災の経験は阪神・淡路大震災。その当時の記憶はほとんどないが、あの日以来の大震災だった。
あれから10年。
毎年鳴り響くサイレンと共に黙祷を捧げる。
今日も、職場で全員でゆっくりと。
取り巻く環境は大きく変わり、時代と共に新たな年号に変わって、私は社会人として数年経ち、あの頃小学生だった子達が成人を迎えようとしている。
私なんかは全然被災したと言えないくらいだ。
あの時見たテレビの中継は途切れても視線が外せないくらいにショッキングだった。
復旧した電気がテレビを写した時、周りの友人一同が沈黙し、言葉を失った。
充電が出来て、携帯が通じると一斉に地元からたくさんの安否確認も来ていた。
忘れてはならない。
忘れられない。
忘れたくない。
大変な思いをした人たち。
大切な人、場所、ものを失った人たち。
怒りに、忘れてしまう。
悲しみに潰されてしまう。
感情が壊されていく。
たくさんの記憶が残る。
たくさんの苦しみがまだある。
今一度。
起こったことを忘れない。
亡くなられた方々が安らかに眠れるよう、心からお祈り申し上げます。
私が生きていくなかで絶対に忘れられない日だから。